2015/08/20
ある日、ヨシコ社長が他の飲食店グループZ社の社長(50代男性)とお酒を飲んで盛り上がっていたときのことです。
お酒の勢いも借りて、ノリに乗ってるヨシコ社長。ふたつ返事で引き受けてしまいました。
飲食業でよく聞くのが「共同経営」です。共同経営とは言いながら、10店舗以上の店舗を経営する比較的大きな会社の経営者と、数店舗のみを経営する比較的小さな会社の経営者とが組む場合が多く、実態は「共同経営」というよりも「フランチャイズ」に近いこともあります。
翌朝、ヨシコ社長は昨晩のことを思い出して、少し調べてみることにしました。
共同経営と言っても経営主体にはさまざまな形が考えられます。
どこが経営主体かによって、何かあったときの責任が違います。食中毒等の事故があったときの責任、従業員に対する責任、借り入れをするときの責任等です。
また、利益の分配についても
など、様々な方法があり、これらを組み合わせて決定されます。
勢いで共同経営することを決めるのはいいのですが、その後、これらの条件についてきっちり詰めることが大切です。というのも、これらの条件を詰めないままに、なんとなく話が進んでいくことがよくあるからです。
不安になってきたヨシコ社長は、共同経営をする約束をしたZ社の社長と打ち合わせをしました。そこでは、先方が次のような条件を想定していることが分かりました。
(1) 新店舗の経営主体は、株式会社ヨシコ・キッチンとする。(上記Aタイプ)
(2)新店舗の業態は、Z社が展開している人気の居酒屋業態とする。
(3)新店舗の開業にかかる費用(約2000万円程度)は株式会社ヨシコ・キッチンとする。
(4)新店舗の開業に必要な什器や内装は、Z社のグループ会社に発注する。
(5) 新店舗の運営スタッフ(店長を含む)は、株式会社ヨシコ・キッチンの従業員、アルバイトとする。
(6) 新店舗の食材・飲料は、Z社グループから仕入れる。
(7)新店舗で出た利益は、50%:50%で、株式会社ヨシコ・キッチンとZ社で分配する。
経営数値が苦手なヨシコ社長は、友人の公認会計士に相談してみました。そこで分かったことは、「共同経営」とは言いながら実態は「フランチャイズ」に近い、ということでした。
確かにZ社の人気の居酒屋業態で出店できることは、大きな魅力です。しかし、それ以外の条件は、ヨシコ社長にとって不利なものばかり。大きな飲食店グループの社長さんに「共同経営」を持ちかけられて喜んでいたけれど、実態は「フランチャイズ」のようです。
今回の出店については、もう一度よく考え直した方が良さそうですね。
飲食店の「共同経営」は、具体的な条件が決まらないまま(当事者間で持っているイメージが全く違うまま)話しが進んでいくことがよくあります。また、さらに問題なのは、このような条件について、社長さん同士の口頭での約束だけで、契約書が無い場合です。後日、言った言わないのトラブルになりかねません。
「共同経営」をする場合は、勢いだけでなく、具体的な条件の交渉も大切にしてくださいね。
次回は「どの店長にボーナスをたくさんあげよう?~店長の評価について~」です。少し目線を変えて、飲食店の経営について考えていきます。
9月20日アップ予定。