いざ新店舗を出店!~予算をいくらで考える?~

いざ新店舗を出店!~予算をいくらで考える?~

2015/05/20

レストランC店の改善に頑張っているある日、ヨシコ社長の電話が鳴りました。

飲食店を経営している他の経営者からの連絡です。

どうやら、居酒屋を廃業したいので、その店舗を居抜きで継続してほしいようです。

 

 

飲食店経営の失敗原因は、新規出店にあり!

 さっそく店舗を視察したヨシコ社長。

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  居抜きで売却したいという居酒屋は、よくある雰囲気の居酒屋。席数は40席。

 

 そこでヨシコ社長が考えたのは、店の中央に大きな水槽を置いてそこに魚を泳がせ、お客さんが希望する魚を従業員が網ですくってさばく、という店舗です。

 

 他の店にない目新しさを求める、というのは、繁盛店を作るうえでは大切なことでしょう。でも、注意しなければならないことが2つあります。

 

 ひとつは、リピートしてもらえるかどうか。

 目新しさがあれば、多くのお客様を店舗に集めることはできるでしょう。しかし、1度は目新しさで店舗に来てくれたとしても、リピーターになってくれるかどうかは、やはりサービス次第。どれだけ珍しい店でも、食事がイマイチだったり、スタッフのサービスレベルが低ければ、リピートはしてもらえません。

 

 もうひとつは、借入金が返済できるかどうか。

 実は、飲食店経営の失敗の最大の原因は、たいてい新規出店に多額の資金をかけたけれど、実際の集客が思ったほどなく、借入金を返済できなくなる、というパターンなのです。

 

 

初期投資の目安は、投下資金を18ケ月で回収できるかどうかs15

 

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 見積もりを見てみると、すべて込みで2000万円のようです。

 

 さて、2000万円で新店を出店しても大丈夫なのでしょうか。

 それを判断するうえで考えないといけないことは2点です。

 

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 では、18ケ月で回収できるかどうかを考えるには、どうしたらいいでしょうか?

 

 新店は、40席あり、定休日は無し。

 客単価は、3,300円。

 平均して1日 1回転とすれば、1か月あたりの売上は、40席×30日×3,300円×1回転≒400万円となります。

 

 繁盛店で、非常にうまく材料費、人件費をコントロールして、売り上げの20%のお金が残ります。しかし、このような優良店舗は10店に1店もありません。ぎりぎり黒字の店舗、黒字であってもせいぜい売上の10%程度が普通です。

 

 ヨシコキッチンの新店が、奇跡的なくらいにうまく運営できたとして、1か月あたりの店舗の利益は、400万円×20%=80万円になります(1年間で960万円の利益)。

 新規出店資金2000万円を何か月で回収できるか見てみると、2000万円÷80万円=25か月です。

 

 店舗運営が非常にうまくいったとしても、投下資金を回収するのに25か月。

 もちろん、奇跡的にうまくいくこともあるでしょうし、店がマスコミに取り上げられて、1日2回転することも考えられるでしょう。しかし、そのように楽観的に期待して出店していては、会社が傾いてしまいます。

 

 今回の出店に当てはめて考えると、80万円×18ケ月=1440万円くらいが初期投資額の上限と考えてよいでしょう。

 

 

会社全体の財務状況からみて、借入水準が適当かどうか?

 

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 手元資金と借入金、それぞれにいくらが適正水準なのでしょうか?

 いろいろな考え方がありますが、目安として次のように考えてみましょう。

 

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 飲食店は基本的に現金商売なので、(企業が接待用で使用する高級店等を除けば)資金繰りは楽なはずです。いわゆる運転資金のための借入金はゼロで足りるはずです。

 

 それでは、手元資金はいくらぐらいあれば安心でしょうか。

 目安になるのが、2か月分の支払額です。毎月、食材費、経費、人件費などの支払いがあります。これを合計すれば1か月分の支払いです。この2か月分の資金があれば、資金繰りに悩む必要はないですし、たとえばどこか1店舗がなんらかの理由で臨時休業になるなどしても、資金繰りには余裕があります。その間に銀行から新たに借り入れをするだけの時間もできます。

 

 次に、借入金の適正水準はどれくらいでしょうか。

 飲食店は運転資金がいらないですから、借り入れをするのは設備資金が目的です。なので、目安としては、いま現在稼働している店舗の建物付属設備や什器備品などの帳簿価格の合計額が、借入金の水準の目安となります。

 なお、廃棄した資産は除かなければなりませんし、減価償却費を適正額だけ控除した後の金額で考えなければなりません。

 

 ヨシコキッチンは、A店、B店、C店合わせて、毎月の食材費、経費、人件費の支払いが約800万円ですから、この2か月分1600万円が手元資金の適正水準です。

 ところが、今の手元資金は500万円しかありません。

 

 また、借入金は3000万円あります。今のA店、B店、C店を出店するときに借りたものが2500万円残っているのと、過去に出店して失敗し、退店した店の分で借りた借入金が500万円残っています。

 これに対して店舗の資産は1000万円しか残っていません。現状でも借入金が2000万円も過大な状態です。

 

 今回の新規出店、もう少しプランを考え直したほうがよさそうですね。

 

 次回のテーマは、「新店出店!どれくらい初期投資にお金をかける?2」です。新店舗の事業計画について、もう少し数値面からみていきたいと思います。6月20日アップ予定です。

 

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